ここでは、使用貸借として貸している土地の評価単位が争われた事例を簡単にご紹介します。
評価単位の基本的な知識については、下記「土地の評価-路線価による計算方法」の頁の「3 土地の評価単位の基本」に書いていますので、併せてご覧ください。

土地の評価ー路線価による計算方法


使用貸借とは、賃貸料を収受しない又は固定資産税程度の賃貸料で土地を貸している場合の貸借関係のことです。
自用地には、土地の所有者自身が使用している土地のほかに、使用貸借で貸している土地も含まれます。
そこで、土地の所有者自身が使用している土地と使用貸借として貸している土地が隣接する場合は、その2つの土地は、自用地に該当することから、一体として利用していると考えるので、合わせて評価することになります。


【目 次】
1.使用貸借の基本的な例
2.使用貸借として貸している隣接地について、接している距離が短いため、別の評価単位とするとされた事例
3.コメント

1.使用貸借の基本的な例
この判決は、「被相続人の居宅の敷地として利用していた部分と相続人が被相続人から使用貸借により借り受けて利用していた部分とを区別せず、自用地として一体として評価する」と判断された事例です。

平成10年10月26日千葉地裁 TAINSコード:Z238-8265
(控訴審である東京高裁平成11年8月30日判決においても、評価単位については、原審判決が引用されている。)
(1)概要
A土地は、普通住宅地区にあり、3世帯3棟の建物の敷地として利用されていて、その形状は、細長い多角形の地形であるが、正面と裏面の二方が道路に面している。
原告らは、A土地は、2筆の土地からなるところ、同土地は、被相続人の居住部分(466.11㎡)と本件被相続人の相続人である亡乙とが利用していた部分(552.06㎡)とでは利用状況が異なる(亡乙利用部分には亡乙所有の建物があり、土地は亡乙が被相続人から使用貸借により借り受けたものである。)ことから、区分して評価するのが適当であると主張していました。
(略図)

(2)裁判所の判断
評価通達においても、宅地は、1筆単位や所有者単位ではなく、利用の単位となっている一画地ごとに評価するとされており、これは宅地の現実の利用状況に即した評価を行うものとして合理的ということができる。しかしながら、利用状況の異なる部分が右のように使用貸借で貸し付けられている場合においては、使用借権が対価を伴わずに貸主、借主間の人的つながりのみを基盤とするもので、借主の権利は極めて弱く、そのため客観的な交換価値を有するものと見ることができないことからすれば、相続財産の評価として宅地の時価評価をなすにあたっては、このような使用借権の存在を減額要因として考慮すべきではないのであって、加えて本件A土地のように自用地と使用貸借により貸し付けられている部分とが一団の画地を形成している場合には、これらを合わせて、自用地として一体評価すべきものと解されるのである。したがって、被告が本件A土地の評価に当たって、被相続人の居宅の敷地として利用していた部分と相続人が被相続人から使用貸借により借り受けて利用していた部分とを区別せず、これを自用地とし一体として評価することは妥当というべきである。

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2.使用貸借として貸している隣接地について、接している距離が短いため、別の評価単位とするとされた事例
平成16年1月8日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-132
(1)概要
A土地は、被相続人が請求人■■に使用貸借により貸し付けている土地で、請求人■■は家屋を建築し、貸家の用に供している。
B土地は、被相続人が請求人■■に使用貸借により貸し付けている土地で、請求人■■は家屋を建築し、貸家の用に供している。
C土地は、被相続人が所有するプレハブの敷地で、当該プレハブは平成11年7月まで■■■■
■■に月額250,700円で賃貸されていたが、本件相続開始日においては空家となっている。
D土地は、被相続人が所有する共同住宅の敷地の用に供されている。
E土地は、請求人■■が居住する家屋の敷地である(被相続人が所有する家屋を請求人■■に使用貸借により貸し付けている)。

(2)国税不服審判所の判断
A土地とB土地は隣接し、請求人らが被相続人から使用貸借で借り受けて貸家を建築し所有しているので、一体評価することについては争いがないが、B土地に隣接するE土地(自用地)は、その接している距離が1.6mと度合いが低く、B土地とE土地の位置及び利用されている路線からみて、E土地を含めてこれらの土地全体で一団の画地を形成していると解するのは合理的ではない。E土地は単独で1各地の評価単位とするのが相当である。

3.コメント
2の裁決は、相続人らが使用貸借で借りている宅地が隣接する距離が短いこと、利用されている路線も異なることから、別々に評価すると判断された事例です。
評価単位について調べているとき、「隣接する距離」も考慮しないといけないのかと、どっと疲れを感じましたが、接している距離が1.6mであることと、両土地の位置関係から、E土地とA土地とB土地を一体として利用されるとは考えにくかったのではないかと思われます。
また、請求人らは、C土地に所在するプレハブについて、「本件相続開始日には空室であったが、平成11年7月以降も入居者の募集を行い平成12年3月から同年6月まで■■■■に賃貸しており、継続して貸家の用に供していたものである」として、C土地は、貸家建付地として評価すべきであると主張していましたが、国税不服審判所の判断では、C土地は自用地と判断されています。そして、そうすると、A土地、B土地、C土地、E土地が自用地に該当するので、E土地が隣接する距離も上記の1.6mにC土地に隣接する部分が加算されることから、これらの土地を一体評価することになるのではないかという疑問が残ります。しかし、この点について国税不服審判所の判断はなく、また、上記土地の評価も、A土地とB土地が1つの評価単位で評価されていて、C土地、E土地はそれぞれ別々に評価されていました。