昨日配信されたTAINSのメールニュースの「今週の判決・裁決」に、所得税の配当所得についての平成30年9月3日非公開裁決の記事を書きました。
このメールニュースは、TAINSの編集員が順番で書いていますので、約2カ月に1回順番が回ってきます。
平成25年頃から書いていますので、年6回、既に7年ほど書いています。
このメールニュースでは、私は、「最新のもののご紹介」というよりも、「これは実務に役立つ」とか、「この世に出したい」と思った判決、裁決を書くようにしています。
けれど、このメールニュースは、TAINSのHPのTOP画面で1か月程度は、見ることができるのですが、その後はTAINS便りという会員のみが閲覧できる会報誌の方に収録されてしまって、外部の方は見ることができません。
ですので、今まで執筆したメールニュースの中で、この裁決はもっと皆様に知っていただきたいと思うものをここで順次ご紹介したいと思います。

まず、第1回目は昨日のメールニュースです。
この平成30年9月3日非公開裁決は、定時株主総会で配当の決議をし、定時株主総会と同じ年にあった臨時株主総会でその配当の支払決議を遡及的に取り消した配当について、株主が所得税の申告をしないといけないか否かが争点となった事例です。
つまり、配当の支払決議があった年に、その決議が遡及的に取り消されましたが、この配当は配当所得の申告をしないといけないのでしょうか?という、ありそうで、なさそうな事案です。
国税不服審判所は、配当所得の申告をしないといけないという判断をしていますが、その理由として次のように述べています。
「株式会社の株主の配当支払請求権は、剰余金の配当がその効力を生ずる日に具体化し、以後は、株主としての地位から独立した権利となり、別個に譲渡等の対象となるなど、第三者が利害関係を持つ可能性も生じるのであって、仮に、その後の株主総会における配当取消決議によって、かかる配当支払請求権を消滅させることができるものとするならば、法的安定性を著しく害する結果となるから、一旦、独立かつ具体的な権利として発生した配当支払請求権を、株主総会の決議によって剥奪したり変更したりすることはできないというべきである。
本件配当支払請求権は、平成25年10月15日(定時株主総会のあった日)に、本件配当の効力の発生と同時に具体化し、以後、株主としての地位から独立した権利となっているから、本件取消決議は、本件配当支払請求権に影響を及ぼすものではない。したがって、本件配当は、本件取消決議により、その効力が無くならない。」

配当の支払決議が遡及的に取り消されたということは、株主は、配当金を受領していた場合、返金することとなったのではないかと思いますが、返金が済んでいても、一旦、配当所得も含めて申告し、その後、更正の請求をして納めすぎた税金の還付を受けるということになるのでしょうか?
また、法人側は、配当金の源泉所得税を支払時に徴収し、翌月10日までに納付しなければいけませんが、この源泉所得税について過誤納金として、還付請求をする必要があります。
なんて、面倒な(+o+)。