昨日は、日本税務会計学会という東京税理士会が主宰している学会の前学会長の多田先生を囲む会に出席しました。
お土産に、ご著書と真珠のブローチをいただきました。
とても素敵なブローチで、会費よりもお土産代の方が高かったのでは?と心配になりました。

多田先生は、非常に厳しく指導される方ですが、毎年、年次大会という学会の1年に1度の一大イベントの準備をされながら、月に6回もある月次研究会も、ご予定がない日は必ず出席される等、後進の育成にお力を尽くされた方です。
一昨年、平成30年の年次大会では、私もパネリストで発表を担当しましたが、そのときに4月~11月までご指導いただきました。
多田先生のような博学多識な方に直接指導していただき、また、いろいろなことを教えていただくことができて、とても楽しく、ありがたい経験をさせていただきました。

平成30年の年次大会のテーマは、「少子高齢社会・経済構造の変化に伴う所得税のあり方ー所得控除を中心としてー」で、私は「所得税における税負担のあり方」というテーマで執筆しましたが、このときの私の論文は、いわゆる「総論」の部分を書いたものでしたし、税制改正について、お一人の方の主張に反論している文章が長くなっているので、ここでは公表しませんが、この年次大会の後、私の所属する支部の会報誌に書いた論壇を公表します。
タイトルは、「高所得者の税負担について―寄附金控除の制限を緩和して、税に拠らない所得再分配を!-」です。
この論文で私は、「我が国の財政状況から、今後、高所得者に更なる税の負担を求めることは必須の課題となるが、高所得者に対する課税について、所得税の税率を高くしたり、分離課税の配当所得、株式譲渡所得、土地の譲渡所得についての税率を高くすることは、高所得者が海外の軽課税国に住所を移すことが懸念されたり、他の政策との兼ね合いがあることから、実現が困難である。そこで、寄附金控除の制限を拡大して、高所得者が自らの意思に基づいて、低所得者を支援する団体に寄附をする税に拠らない所得再分配を講ずるようにしてはどうか」という提案を書いています。
ただ、私がこの論文で、一番言いたかったのは、「おわりに」のところで、「日本には、ノブレス・オブリージュ(仏:noblesse oblige)といわれる、財産、権力、社会的地位を持つ人にはその保持について社会的な責任が伴うという道徳的な考え」が浸透していないというところです。
財産、権力、社会的地位を持つ人が、自分の財産を守ることばかり考えたり、自分の身内ばかりに便宜を図ったりするようでは、適材適所という理想が図られないばかりか、資本主義による行き過ぎた格差が広がるばかりです。
そして、現在のような行き過ぎた格差が更に拡大することは、高所得者の方に対してもいずれ悪い影響を与えることとなることは、ちょっと考えればすぐにわかることです。もし、わからないという方がいらっしゃったら、その方は、短期的にしか物事を考えられない、従来の競争社会や物質主義的な考え方でしか考えられない想像力が乏しい方だと思います。これからは、社会的な構造が大きく変化していくと思いますので、従来の考え方ではいつの間にか社会から取り残されていたということにもなりかねません。ある程度の年齢の方は、「逃げ切る」ことを考えられているのかもしれませんが、「逃げ切る」ことよりも、もう少し、想像力を広げるように訓練されてみてはいかがでしょうか。
この論文は、想像力の訓練のためのものではありませんし、字数に制限があったので、具体的な控除限度額の計算については触れていませんが、ご一読いただければ幸いです。
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高所得者の税負担 税に拠らない所得再分配