旧ブログの「特別寄与料の上限―長男の嫁は、本当に特別寄与料をもらえるのか?」の記事をこちらでご紹介します。



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やっと、お仕事が一段落しました。
で、前回の続きを書こうと準備していましたが、昨日の日本税務会計学会の月次研究会で、非常に興味深いことを聞きましたので、ちょっとだけ割り込みです。
日本税務会計学会というのは、東京税理士会主催の学会で、東京税理士会に所属している税理士は、全員が会員となっています。
私は、訴訟部門の委員ですが、ほかの部門の研究発表もよく聞きに行きます。
昨日の講師は、佐々木・岡田法律事務所の弁護士の岡田洋介先生でした。弁護士の先生ですので、外部からお招きした講師です。

民法の相続法の改正と相続税の改正は、私が補助講師をしている小林磨寿美先生のTAINS研修会のテーマですので、よく勉強しなくては…ということで、この内容の研修会は今年2回目です。

本題に入ります。
改正後の民法の相続法では、従来、考慮されていなかった相続人以外の人の被相続人への貢献を考慮し、「特別の寄与の制度」を新設しています。

例えば、今までは、相続人ではない長男の嫁が、被相続人(義父)の介護を一生懸命していても、相続人ではないので、遺産の分配を受けることができませんでした。
そこで、この不公平に対応し、「特別の寄与の制度」によって、被相続人に対して無償で療養看護などをした親族が、相続人に対して、その「寄与」に応じた額の金銭の支払を請求することができることになりました。(民法1050条)

良かったですね(^o^)丿。
これで、長男の嫁の長年の苦労が報われますね。
でも、これでめでたしめでたし、で終わりませんでした。
民法1050条の4項です。
特別寄与料の額に「上限」がありました。
しかも、その「上限」は、被相続人の遺産の価額から、遺贈の価額を控除した残額を超えることができないとされています。
つまり、被相続人が遺言書を作って、相続人や孫に全部の財産を遺贈してしまって、残額が0円だったら、特別寄与料の額も「0円」となるのです。
とんでもない落とし穴ですね( ゚Д゚)。

特別の寄与の制度は、そもそも、遺言がない場合の相続人間の遺産分割協議を想定しているようです。
そして、その遺産分割協議の時に、特別の寄与料を相続人に対して請求できる…ということのようです。
また、遺贈の価額を控除した残額を上限にしているというのは、「自分の遺産を長女にあげたい」等の被相続人の意思を尊重するという趣旨だと思います。
ですが、被相続人が財産を全て、相続人や孫たちに遺贈したら、長男の嫁は、やはり何ももらえない…ということになってしまいます。
ですので、遺言書を作成する場合は、長男の嫁の寄与分も、長男の嫁に遺贈するようにしてあげてください。

改正民法は、一部を除いて、2019年7月1日以後に開始した相続について適用されます。
皆様、ご注意ください(*’▽’)。