令和元年7月16日から、金融商品取引所における上場株式の普通取引について、株式等の受渡日が1日早くなりました。
改正前は、投資信託の売買が成立した日である約定日から起算して4営業日(T+3)が決済日とされていましたが、今回の改正により、約定日から起算して3営業日(T+2)となりました。

上記の図は、東海東京証券のホームページからお借りしました。
http://www.tokaitokyo.co.jp/company/info/service/info190612delivery-faster.html

株式の受渡日が1日早くなったのはとても喜ばしいことなのですが、年末に株を譲渡したとき、年末の特定口座の取引ってどうなるのか、わかりにくいですよね。
上場株式等の譲渡損失は損失が発生した年以後、3年間繰り越すことができますが、年末に「繰越損失を使うために譲渡しておこう」と考えたとき、一体いつまでが「年内」の譲渡になるのか、わかりにくいですよね。それに、そもそも「約定日」が「年内」なら「年内」の譲渡となるのか、それとも「受渡日」で譲渡があったこととなるのか、よくわかりません。
ですが、これについては、とても良い裁決がありますのでご紹介します。

・平29年5月8日(公表裁決) TAINSコード:J107-2-04
この裁決では、審査請求人は、平成26年12月26日を約定日、平成27年1月5日を受渡日として上場株式等を譲渡しています。
平成26年12月のカレンダーを確認してみます。

この年は、12月26日が金曜日で、そして、4営業日目かどうかよくわかりませんが、翌年の1月5日が受渡日ということで、12月26日に譲渡しても10日後の1月5日の受渡しとなってしまいました。
審査請求人は、約定日の時点で総収入金額に算入して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該上場株式等の譲渡については、受渡日の時点で総収入金額に算入すべきであるとして所得税等の更正処分を行いました。
国税不服審判所は、次のように判断して「受渡日」の属する年の株式等に係る譲渡所得等の総収入金額に算入すべきものであるとしています。
源泉徴収選択口座は、個人投資家の確定申告等の事務の負担の軽減に配慮する観点から申告不要の特例として設けられたものである。そして、源泉徴収選択口座が開設されている金融商品取引業者等は、その年中に当該源泉徴収選択口座において処理された上場株式等の対価の額等を記載した報告書を源泉口座開設者に交付しなければならないとされている。
このような源泉徴収選択口座の趣旨及び目的等に照らせば、源泉徴収選択口座内における特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る課税関係は、金融商品取引業者等による源泉徴収及び報告によって完結していると解すべきであって、源泉徴収による所得税の納税義務及び納付すべき税額は、源泉徴収すべきものとされている所得の支払の時に成立し、その成立と同時に確定することになる。
本件においては、措置法の規定に従って金融商品取引業者等が本件受渡日を基準として本件譲渡に係る譲渡所得の金額を計算し、源泉徴収及び報告を了して本件口座の課税関係が既に完結している。そのため、本件譲渡に係る譲渡所得の総収入金額について、本件約定日を株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期と選択して申告することはできず、本件受渡日の属する平成27年分の株式等に係る譲渡所得等の総収入金額に算入すべきものである。

ということで、「受渡日」の属する年の総収入金額に計上するということです。
平成26年の場合、「受渡日」が年内となるように譲渡するには、12月25日に譲渡しないといけなかったようです。
株取引においてはその年の取引最終日を「大納会(通常12月30日でその日が土日の場合は前営業日)」というらしいのですが、この辺りのこともわかりにくいです。
上場株式等の繰越損失と損益通算をお考えの方、受渡日は1日早くなりましたが、余裕を持って譲渡するようにしてください。