タイトルをメールニュースのご紹介に変えました。
私が、このHPでメールニュースを発行しているみたいでしたので。

メールニュースのご紹介の第2回目は、退職所得の事例で、平成27年12月18日の公表裁決です。
平成24年分の所得税で退職所得の申告をしていなかったため、平成25年に個人事業で生じた損失を平成24年分に繰戻しさせたときに、退職所得について課された源泉所得税の還付を受けることができなかったという事例です。

請求人は、平成24年12月21日に自営業を開業し、平成24年分の所得税について青色申告の承認を受け、法定申告期限内に青色申告をしました。
請求人は、平成24年中に、退職給与の支払を受け、退職所得について源泉所得税を徴収されていましたが、平成24年分の所得税で退職所得の申告をしていませんでした。
その後、請求人は、平成26年3月17日(15日が土曜日のため、この日が所得税の法定申告期限)に、平成25年分の所得税の青色の確定申告書と平成25年分の純損失の金額を平成24年分に繰り戻し、所得税○○○○円を還付請求する旨記載した純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書を提出しました。
しかし、原処分庁が、還付請求書に記載された退職所得に係る金額等が、前年分の確定申告書に記載されていなかったことを理由に、退職所得に係る所得税を還付金の額の計算の対象にすることなく還付請求の一部に理由がない旨の通知処分を行ったため、請求人が、その取消しを求めました。
審判所は次のとおり判断して、請求人の請求を棄却しました。
純損失の繰戻しによる還付の請求に係る所得税法第140条第4項は、その適用に当たって、純損失が生じた年分及びその前年分の申告について、帳簿記入により正確性を担保された青色申告書を提出することを要件としていることからすると、繰戻し還付請求の還付金の額の計算においては、前年分の申告において、単に青色申告書が提出されていれば要件を満たし、確定申告書に記載されていない所得も当該還付金の額の計算の対象になるものと解すべきではなく、正確性を担保された青色申告書に記載された所得及びそれに係る所得税を当該還付金の額の計算の対象としたものと解される。したがって、繰戻し還付請求においては、純損失の発生した前年分の確定申告書に記載されていない所得及びそれに係る所得税を、純損失の金額の繰戻しによる還付請求の対象とすることはできない。

退職所得は、支払を受けるときまでに、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出している場合、源泉徴収だけで所得税等の課税関係が終了(分離課税)しますので、原則として確定申告をする必要はありませんが、退職後、個人事業を開業する場合、このように、翌年に生じた損失の金額の繰戻還付を受けるためには、申告された方が有利となることがあります(※注 青色申告をする等の要件も必要)。
また、退職した年の所得が少ない場合、退職した年の所得で、社会保険料や生命保険料、配偶者控除や扶養控除等の所得控除を全て控除できないことがありますが、このような場合には、退職所得を申告すると、退職所得で源泉徴収された所得税の還付を受けることもできます。
昨年退職された方は、退職所得を申告した方が有利かどうか、どうぞご検討ください。
(この裁決は、国税不服審判所のHPで公表されています。)