ここでは、接面道路の歩道橋などにより土地の利用価値が著しく低下しているか否かが争点となった事例と利用状況に応じた面積で評価単位を区分すると建ぺい率を超過する場合をご紹介しています。
下記のタックスアンサー№4617にもあるように、利用価値が著しく低下している宅地に該当する場合、10%の評価減をすることができます。


宅地の利用価値が著しく低下しているか否かが争点となった判決や裁決は大変多いので、宅地の高低差や騒音などの頁のように争点ごとに類型化したいと思っておりますが、この頁についてはまだできておりません。
とりあえず、接面道路に歩道橋がある場合と日照及び眺望、土地区画整理法による制限について、簡単にご紹介します。
【目 次】
1.接面道路の歩道橋により、宅地の利用価値が著しく低下しているとされた事例
2.歩道橋により間口が狭くなるという事情は、宅地の利用価値が著しく低下したものと認められないとされた事
 例
3.そのほかの宅地の個別事情が認められた事例
(1)日照及び眺望
(2)土地区画整理法による制限



1.接面道路の歩道橋により、宅地の利用価値が著しく低下しているとされた事例
平成18年3月10日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-163
(1)概要
乙土地は、南側C路線及び西側D路線に面した角地にある不整形な土地で、平成14年分路線価図において、普通商業・併用住宅地区とし、路線価を南側C路線96,000円及び西側D路線81,000円としている。
乙土地が接する南側C路線及び西側D路練の歩道(幅員各3m)には、幅1.9mの横断歩道橋が設置されており、本件乙土地と横断歩道橋の間の歩道の幅員は、0.7mから0.9mである。また、南側C路線及び西側D路線に対して乙土地が接している距離のうち、横断歩道橋に対面していない部分は、西側D路練の2.0mのみである。なお、車道と横断歩道橋の間には、横断防止のための歩行者自転車用柵(ガードレール)が設置されている。
乙土地は、南側C路線に対して、間口距離5.5m及び奥行距離19mである。


(上記の図は、TAINSに収録されている乙土地の図ですが、方角、路線ともに不明です。大体、このような地形の土地だということのみご紹介しようと思い掲載しています。)

(2)請求人の主張
乙土地は、狭隘で不整形な土地であるだけでなく、横断歩道橋及びガードレールが設置され前面車道との連続性が失われており、また、接面道路の歩道部分の幅員が狭いことから、隣接地に比し利用価値が著しく低下していると認められる。

(3)原処分庁の主張
乙土地は、歩道に横断歩道橋が設置されているため、直接公道に接しているのは西側D路線の2.0mの部分のみである。
したがって、西側D路線を正面路線とする一方路線でその間口を2.0mの土地として評価基本通達20《不整形地の評価》により評価する。
なお、ガードレールが設置されていることは、評価に影響を及ぼさない。

(4)国税不服審判所の判断
乙土地は、南側C路線及び西側D路線に面しているから、その歩道上に横断歩道橋及び歩行者自転車用柵(ガードレール)が設置されているものの、その双方の路線について建築基準法上の接道義務を満たしている。しかしながら、横断歩道橋が設置されていることにより車両進入の障害となっていること及び歩行者の通行が可能ではあるものの歩道の幅員が0.7mから0.9mと狭いことから、乙土地は、その利用に著しい制限を受けているものと認められる。そして、横断歩道橋による利用制限は、乙土地の全面積に及ぶと認められるから、乙土地の価額は、算出額に10%を乗じて算出した金額を控除した金額により評価することが相当と認められる。なお、評価に当たって、横断歩道橋による利用制限を考慮したことに加えて、さらに歩行者自転車用柵(ガードレール)による利用制限を考慮する必要性は認められない。

2.歩道橋により間口が狭くなるという事情は、宅地の利用価値が著しく低下したものと認められないとされた事例
(平成26年5月13日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-412
(1)概要
歩道橋の東側の階段及び昇降口が、本件3土地の南側に設置されており、その歩道橋設置部分の距離は15.06mである。本件3土地と歩道橋設置部分の間は水路(歩道状部分という。〕であり、蓋がされ歩行者等の通行は可能であるが、国道としての指定又は市道としての認定はされていない。本件3土地と歩道橋の間の歩道の幅員は1.5mである。

(2)請求人の主張
本件3土地が本件市道に面している距離のうち約11.78mに歩道橋が設置されているため、本件3土地の間口が狭くなり車両の進入に障害がある。
また、本件3土地と本件歩道橋の間の歩道の幅員は約1.5mと狭いため、本件3土地は、その利用に著しい制限がある。

(3)原処分庁の主張
本件3土地の南西側に国道を横断するための歩道橋が設置されているが、本件3土地が本件市道に面している距離のうち、歩道橋が設置されている距離は15.06mであり、この距離は本件3土地が市道に面している距離の一部にすぎず、車両の出入りに特段制限はない。
また、本件3土地と歩道橋の間の歩道の幅員は1.5mあり、歩道幅は十分に確保されているから、本件3土地は、利用価値が著しく低下しているとは認められない。

(4)国税不服審判所の判断
本件歩道橋設置部分と本件3土地の間には歩道状部分が存しているが、歩道状部分は道路認定等がされていないから、本件3土地の価額を評価通達の定めに従い評価する場合、本件3土地が歩道状部分に接する部分は間口に該当せず、本件3土地の価額を評価通達の定めに従い評価する場合の間口距離は本件3土地の市道に面する側の距離(42.01m)のうち、歩道状部分の距離(15.06m)を除いた距離になる。
そして、評価通達20-3に間ロが狭小な宅地を評価する場合の画地調整の方法が定められており、評価する土地の間口距離、すなわち評価する土地が道路に接する部分の距離についてのしんしゃくは、当該定めによる画地調整を行えばそれで足りることになる。
 請求人らは、本件歩道橋が設置されているため本件3土地の間口が狭くなる旨、また、歩道状部分の幅員が狭いことから利用価値が著しく低下している宅地の評価の10%評価減を適用すべきである旨主張するが、いずれも本件3土地が市道に接していない部分の事情であり、本件3土地を評価通達の定めに従い評価する場合に、間口距離に含まれていない部分の事情となる。したがって、本件3土地の価額を評価する場合に、当該事情については、個別にしんしゃくしなければならない事情とは認められない。
以上のとおり、請求人らが主張する事情については、本件3土地の間口距離に応じて評価通達に定められた画地調整を行えば足りるものであり、(中略)請求人らの主張には理由がない。

(5)コメント
この裁決は、歩道橋がある歩道部分が水路だったことから、その部分は元々道路に接していないため、歩道橋による利用価値の低下云々ではなく、間口距離の調整の問題と判断されたものです。深い深い落とし穴ですね。

3.そのほかの宅地の個別事情が認められた事例
(1)日照及び眺望
 平成13年6月15日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-212
この裁決は、新幹線の高架線の敷地に隣接し、かつ、元墓地であった土地の評価について、震動・騒音による評価減と元墓地であることの評価減各10パーセントの減額の他に、新幹線の高架線が地上約7メートルの高さにあることからすれば、日照及び眺望への影響が認められるとして、更に10パーセントの評価減を行うことが相当であるとされた事例です。

(2)土地区画整理法による制限
平成20年5月29日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-287
この裁決は、本件各土地は、土地区画整理法により長期間にわたり利用上の制限を受け、仮換地の指定を受ける具体的な時期も明らかでないことから、利用価値が著しく低下していると判断された事例です。