この頁では、土地の評価の方法に関連する下記のことについて書いています。


【目 次】
1.倍率方式による評価方法
2.私道に路線価が付されていないとき
3.不動産鑑定士による評価

1.倍率方式による評価方法
倍率方式とは、固定資産税評価額に定められた倍率を乗じる計算方法で、路線価方式を適用しない地域に適用される評価方法です。
宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式とがあって、路線価方式は路線価による評価方法で、路線価が設定されている地域で適用する評価方法となっています。
一方、倍率方式とは、路線価が設定されている地域以外の地域で適用する評価方法です。
その宅地の所在地が、倍率方式の適用地域であるかどうかは、路線価図で調べます。路線価図に「倍率地域」と表示されている地域については、倍率方式により評価します。
 
倍率方式による評価の計算方法は、
     固定資産税評価額 × 倍率 です。
 
固定資産税評価額は、固定資産税評価証明書に記載の価額ですが、固定資産税の納税通知書に、「価格」または「評価額」と記載されていることもあります。
登記や相続税の申告のときには、固定資産税評価証明書の添付が必要になりますので、この固定資産税評価証明書をとって確認していただいてもいいかと思います。

次に上記算式の「倍率」ですが、この「倍率」は、国税庁ホームページにある「評価倍率表」に載っています。
国税庁のホームページのTOP画面の下の方の「分野別メニュー」の右下の「関連サイト」にある「路線価図・評価倍率表」をクリックし、次の日本地図が書かれている画面の左側の都道府県を選択します。
すると、次の画面に「1.土地関係」と出てきますので、「評価倍率表」の「一般の土地等用」(工場用地やゴルフ場用地の場合は、該当部分)をクリックします。

次の画面で、市町村等の一覧が出てくるので、ご自身の土地が所在する市町村を指定します。

「倍率」は、その宅地の所在する場所ごとに異なりますので、必ず、その宅地の所在する場所の倍率を調べてください。

固定資産税評価額と倍率がわかれば、上記の算式にあてはめ、評価額を求めます。
固定資産税評価額は、その土地を個別に評価したものとなっているので、土地の形状などは考慮して評価されています。
ですので、路線価のように、奥行長大や間口狭小、不整形地などの補正率は使用しません。
ただ、財産評価基本通達20-2の地積規模の大きな宅地の評価を適用することはできます。
また、もし他人に土地を貸していたり、家を貸していたりする場合は、上記の算式で算出した評価額に、貸宅地や貸家建付地の評価をします。

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2.私道に路線価が付されていないとき
私道については、財産評価の頁の「私道」のところで詳しくご紹介していますが、ここでは、ご自身の所有する私道に路線価が付されていないときに申請する「特定路線価設定申出書」についてご紹介します。
ご自身の所有の土地が接している私道に路線価が付されているときは、その路線価を使用して評価額を計算しますが、路線価が付されていないときは、次のようにします。

・その土地が他にも路線価の付された道路に接している場合…その路線価が付されている他の道路の路線価を使って通常通りの評価をします。
・路線価が付されていない私道にのみ接していて、他の道路には接していない場合…その土地を所轄する税務署に「特定路線価設定申出書」を提出して路線価を付してもらい、その路線価で通常通りの評価をします。
「特定路線価設定申出書」は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
国税庁ホームページのTOP画面の「税の情報・手続・用紙」タブの「申告手続・用紙」→「税務手続の案内(科目別一覧)」の頁に申請書や届出用紙が、税目別に収録されています。

「特定路線価設定申出書」は、「相続・贈与税等関係」の「財産評価関係」の8番目にあります。
  http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-09.htm

特定路線価設定申出書

申請には添付資料として、「特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書」や住宅地図、公図、写真も必要です。
特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書

「特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書」には、道路全体の幅員や奥行、こう配、用途地域等の制限などいろいろなことを記入します。
また特定路線価の設定には3週間以上かかるといわれているので、申告期限を考慮して、余裕をもって申請するようにしてください。

3.不動産鑑定士による評価
相続税の申告は、財産評価基本通達により評価した価額で行いますが、相続税評価額ではなく、不動産鑑定士さんによる鑑定評価で相続税の申告は出来ないのかということについてお答えしたいと思います。

相続税評価額というのは、毎年1回公表される路線価で評価を行うので、市場での取引価格と若干のタイムラグがありますし、相続税評価額を使うと市場での取引価格に比べて、著しく不合理となる場合があります。そこで、不動産鑑定士さんの鑑定評価で相続税の申告が出来ないのかという疑問がわいてくるわけですが…、結論から申し上げますと、鑑定評価で相続税に申告をすることもできます。けれどその場合、鑑定評価をする土地が、相続税評価額で計算することによって、かえって実質的な租税負担の公平が著しく害されるという事情があることを立証(説明)しないといけません。
ここで何故、「租税負担の公平」という言葉が出てくるのかと疑問に思われる方がいらっしゃると思いますが、実は、相続税評価額というのは、納税者間の公平、課税実務の円滑化という趣旨で用いられています。
ちょっと長くなるのですが、順を追って説明します。
相続税法22条の評価の原則に規定されている「…取得の時期における時価」は、「相続開始時における客観的な交換価値」と解されています。
けれど「客観的な交換価値」というのは、必ずしも一義的ではない。つまり、いろいろある。なので、評価通達で財産評価の一般的な基準を定め、その定めた方法で評価することが、納税者間の税負担の公平に資すると考えられているのです。
つまり、一定の基準で画一的に評価することで、納税者間の税負担の公平を図っているということです。
そうでないと、どのような基準で評価したのかよくわからない金額を「相続開始時における客観的な交換価値」だと主張する人が出てきますから。
そして、税務署側で、その金額はおかしいと指摘するのも大変だということです。

ただ、相続税評価額は、あくまでも画一的な方法で評価した価額であることから、評価する土地によっては、時価と非常にかけ離れた金額となって、酷になる場合があります。そして、そういう場合は、不動産鑑定士さんによる鑑定評価で評価することもできるということですが、その際には、「時価とかけ離れていて、これはちょっとひどい」ということを説明(立証)してください、ということになるのです。

実務でも鑑定評価を使うときには、上記のような説明を書面で提出します。
ただ、もし、鑑定評価が認められなかった場合、差額の税金を納めなくてはいけません。そして、その差額部分には過少申告加算税や延滞税も課されますので、よくご検討ください。
 (神戸地裁H20.3.13 TAINZコード Z258-10919参照)