ここでは、土地の利用状況による評価減について説明します。
ここでいう「土地の利用状況」というのは、簡単に言えば、自分が利用している又は他人 ( 法人も含みます )が利用しているということです。
自分が利用している土地を基本として考えた場合、他人が利用している土地は、自分が利用している土地よりも売却等しにくいので、他人の権利部分を評価額から減額することができます。
【目 次】
1.自用地
2.借地権-土地を借りている場合
3.他人に土地を貸している場合



1.自用地
自用地というのは、土地を自分で利用している場合( 使用貸借により貸している場合を含む )ですので、ここでご説明するような土地の利用状況による評価減はありませんが、借地権と貸宅地の評価をする場合の基本となる言葉です。
ですので、下記の計算式などに「自用地としての価額」という言葉がよく使われます。
自用地を評価した金額を「自用地としての価額」といいます。
「自用地としての価額」とは、路線価に奥行価格補正率や奥行長大補正率、不整形地補正率などを乗じて計算した相続税評価額のことです。

2.借地権-土地を借りている場合
借地権は、借地借家法により保護されている権利で、土地の所有者の使用収益権を著しく制限するものです。
相続税では、借地権を設定している場合、利用を制限されている金額に相当する価額を借地権として、土地を借りている人の相続財産とします。そして、土地を貸している人の方は、その土地の底地部分のみを所有していると考えるので、底地部分のみを評価することとなっており、土地の評価額から上記借地権相当額を減額します。
借地権は通常、登記されていないので、土地を借りている人は、自分の財産ではないと思われるかもしれません。しかし、「 借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域 」でない場合は、借地権を相続財産に含めないといけません(評基通27)。この借地権の取引慣行がない地域というのは、個別に調べなくてはいけませんが、通常、路線価が付されている地域は、借地権の取引慣行がある地域です。なので、路線価が付されている地域の方は、借地権を計上しなくてはいけません。
また、「地代を支払っているので、うちの財産ではない」と仰る方もいます。ですが、その地代は、地主さんが持っている底地に対して支払われているものです。
下記の図で説明しますと、借地権部分は土地を借りた人が借りたときに、地主に権利金を支払った部分のことですが、底地部分は地主さんが所有しているということになるので、その底地部分に対して地代の支払いが必要となるのです。

では、次に、借地権の相続税評価額の計算方法を説明します。
借地権の評価方法は、支払っている地代の額によって異なります。

(1)通常の地代を支払っている場合の借地権の評価額
通常の地代とは、その地域において通常の賃貸借契約に基づいて通常支払われる地代をいうとされています(TAINSコード:S600605直資2-58)。
上記で説明したように、「 通常の地代 」を支払っている場合、その地代は土地所有者の底地を使用していることに対する対価です。なので、自用地としての価額に借地権割合を乗した金額が借地権の価額とされます。


ただし、借地権の設定により支払っている権利金の額が通常支払われる権利金に満たない金額である場合等、上記の算式で計算できない場合もあります。
その場合は、下記URLの個別通達をご参照ください。
  http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm

(2)相当の地代を支払っている場合の借地権の価額     
これに対して、借地権の設定の対価である権利金を支払っておらず、「 相当の地代 」という「 自用地としての価額のおおむね年6%程度の地代 」を支払っている場合は、借地権の評価額はゼロとなります。
上記の図の一番右にあるように、相当の地代により支払われる部分は、土地全体だと考えるからです。

3.他人に土地を貸している場合

他人に賃貸借契約で土地を貸している場合は、土地を貸しているのか、土地の上の建物を貸しているのかによって、評価が異なります。

(1)土地を貸している場合の評価
土地を貸している場合の貸している人の持つ財産を貸宅地といいます。
土地を貸している場合、上記の図の底地部分を貸している人の持つ財産と考えますので、算式は次のとおりです。

また、「通常の地代」ではなく、「 相当の地代 ( 自用地としての価額のおおむね年6% )」を受け取っている場合は、自用地としての価額から、その20%相当額を控除した価額により評価します。

(2)土地の上の建物を貸している場合 
土地の上の建物を貸している場合の貸している人の持つ財産を貸家建付地といいます。
土地の上の建物を貸している場合は、土地の上の建物は自己所有となるので、上記の貸宅地よりも自分の財産と考える部分が多くなります。
(算式)


    
上記の算式の賃貸割合は、アパートなどの各独立部分の床面積の合計のうち、課税時期において賃貸されている部分の床面積の割合です。
課税時期に、一時的に空室だったと認められる場合は、賃貸されていたものとします。詳しくは、「貸家建付地-賃貸割合」の頁をご覧ください。

貸家建付地ー賃貸割合