1.評価単位の概要
相続税で土地の評価をする場合、居住用の家屋の敷地は、「宅地」に該当しますので宅地の評価をします。また、田んぼや畑は、「農地」として評価します。では、居住用の家屋の敷地の一部で、家庭菜園をしている場合はどうでしょうか?
家庭菜園は、「宅地」と判断される場合が多いのですが、「農地」として評価する場合もあります。
これは、家庭菜園が隣接の宅地と一体として利用されているか否かによります。
宅地と一体として利用されている場合は、「宅地」の定義である「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」と判断されるため、「宅地」として評価します。
しかし、宅地と一体ではなく、独立して利用されていると認められる場合(その場合、家庭菜園といえるかどうか疑問ですが)は、農地としての評価を行うことになるのです。
このように、どのような地目となるかは、相続開始時の「現況」―つまり、その土地が相続開始日現在どのように利用されているかによるので、登記簿や固定資産税の納税通知書の「地目」が、「農地」となっていても「宅地」と認定される場合もあります。

土地を評価するときの一つの単位を決める方法は、財産評価基本通達7と7-2に書かれています。
財産評価基本通達7では、「土地の価額は、地目の別に評価する。ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする。」とされています。
また、財産評価基本通達7-2では、宅地の評価単位は、「1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする。」とするとされています。この「利用の単位」というのは、「土地の評価ー路線価による計算方法」の「3.土地の評価単位の基本」でも書きましたが、他人に賃貸借契約で土地を貸している場合等も含まれます。そこで、私は、土地の評価単位は、まず「どのように利用されているのか」ということの大きな指標である「地目別」に考え、更に、その土地が、地目別の利用状況以外の原因で利用状況が異なる場合は、その地目別の利用状況以外の利用状況に応じて判断すると理解しています。
しかし、評価単位を判断するのは、非常に難しく、知識と経験が必要です。
また、そもそも、一人の人の経験には限界がありますので、経験できない分は裁決や判決で学んでみてはいかがでしょうか?

ここでは、財産評価基本通達の説明と評価単位に関する次の8つの論点について、参考となる裁決、判決をご紹介します。
判決については、税務大学校のホームページの税務訴訟資料で公開されていますし、裁決のうち、公表裁決と書かれているものは、国税不服審判所のホームページで公開されていますので、是非、本文も読んでみてください。
【注意】
現行の相続税は、遺産取得税方式なので、その土地を「取得した者ごと」に評価単位が異なります。
この「取得した者ごと」という判断基準が争点となった事例は、「単独取得土地と共有取得土地」の頁にご紹介しています。
しかし、ここでご紹介するほかの事例で、「取得した者ごと」ということが争点となっていないものについては、その事例で説明していません。 
なお、相続財産である土地が一つだけで、住宅の敷地など、一つの用途に利用しているという場合や複数の土地があっても、それぞれの土地が離れたところにある場合は、ここで説明している「評価単位」の問題は生じませんので、ご注意ください。