ここでは、賃貸借契約がある土地の評価単位について争われた事例をご紹介しています。
評価単位の基本的な知識については、下記「土地の評価-路線価による計算方法」の頁の「3 土地の評価単位の基本」に書いていますので、併せてご覧ください。

土地の評価ー路線価による計算方法

土地はまず地目別に評価し、その土地が他の土地と一体として利用されている場合は、2以上の地目からなる場合であっても1つの土地として評価することとされています(評基通7)。
つまり、地目のほかに、その土地の利用状況も評価単位の判断の基準となるわけですが、賃貸借契約は土地の利用状況の1つの形態ですので、土地の賃貸借契約が結ばれている場合、原則として、土地を借りている人ごとに1つの土地として評価します。
また、被相続人が土地を借りている場合、その土地は借地権として相続財産となります。
ここでは、被相続人が土地を借りている場合と貸している場合の両方で、評価単位が争点となった事例をご紹介します。
【目 次】
【被相続人が土地を借りている場合】
1.複数の人から土地を借りているとき
2.自用地と借地の一体利用
3.自用地と相当の地代を支払っている土地
【被相続人が土地を貸している場合】
4.借地権者が複数の事業の用に供している土地
5.貸宅地と貸家建付地が隣接しているとき



【被相続人が土地を借りている場合】
1.複数の人から土地を借りているとき

 次の図のように隣接している土地を乙、丙の2人から借地して、これを一体として利用している場合は、借地権の目的となっているA土地及びB土地を合わせて一つの土地として評価します。なお、土地を貸している乙、丙の貸宅地を評価する場合は、それぞれの所有する土地ごとに一つの土地として評価します。

(国税庁ホームページ:質疑応答事例 宅地の評価単位-借地権 一部変更)

2.自用地と借地の一体利用
上記の図で、A土地の所有者が甲だとした場合、つまり、自己所有の土地とその土地に隣接する土地(B土地)を借りて自己所有の土地と一体として利用している場合は、同一の者が権利を有し一体として利用していることから、当該借地(B土地)についても、自己所有の土地と併せて1画地の土地を構成するものとして評価します。

甲の所有する土地及び借地権の価額は、A、B土地全体を1画地として評価した価額を基に、次の算式によって評価します。

なお、丙の貸宅地を評価する場合には、B土地を1画地の宅地として評価します。
(国税庁ホームページ:質疑応答事例 宅地の評価単位-自用地と借地権 一部変更)

3.自用地と相当の地代を支払っている土地
また、2の場合で、所有する宅地(A土地)とその宅地に隣接する借地(B土地)について、相当の地代を支払って借り受けている場合は、一体で評価しますが、相当の地代を支払って借り受けている借地権の価額は零と評価されます。(平成26年4月22日裁決 TAINSコード:J95-4-11)
【類似の事例】
H15-06-30裁決 TAINSコード:F0-3-149
自用地と相当の地代、相当の地代を若干下回る地代を支払っている土地について、これら全体を1画地として評価することが合理的であるとされた事例。

ここまでは、被相続人が借りている土地と自用地が隣接する場合の評価単位でした。
次は、被相続人が土地を貸している場合の評価単位の事例です。

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【被相続人が土地を貸している場合】
4.借地権者が複数の事業の用に供している土地

H10-06-23裁決(公表裁決) TAINSコード:J55-4-23
(1)概要
J社は、本件相続の開始日現在、本件土地(下図のピンク色の部分)及びB土地を被相続人及びHからそれぞれ賃借し、これらの土地は、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として利用している。
本件土地は、地続きであり、分割されることなく、その全部を相続人であるる請求人(持分100分の21)及びG(持分100分の79)の2名により相続されている。
J社の本件相続の開始日現在における総発行済株式数は、1,000株であり、被相続人の所有株式数は275株(再々更正処分によれば、株式数が266株である。)であり、請求人とその同族関係グループの所有持株割合は100%である。
(略図)

(2)請求人の主張
本件土地は、借地法第1条(借地権の定義)に規定されている賃借権により、現実に、賃借人であるJ社の所有するガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として、最有効使用されているものであるから、建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、それぞれを1画地として評価をすべきである。
また、土地は用途転換、併合等の多用性をもつもので、相続税の課税標準の計算に当たつては、相続の開始日の現況により評価すべきであるにもかかわらず、原処分庁は、将来、本件土地が一体となる可能性を前提としたところで、本件土地の全部を1画地として評価したのであれば、その評価方法は、非現実的な評価であり、現況に応じた評価を規定している相続税法及び評価通達に反する非合理的かつ非合法的なものである。
ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る事業には、法律による規制等があることから、これらの事情を考慮して、事業の用に供されている建物の敷地ごとに評価をすべきである。

(3)国税不服審判所の判断
土地を他人に賃貸している場合には、賃貸借契約に基づく制約を受けることとなるため、その土地の使用収益、処分ができる利用単位ないし処分単位を1画地というものとされていることから、2以上に貸し付けられている場合には、その借主の異なるごとに1利用単位(1画地)とし、一方、その土地を他人から賃借している場合には、同一人が2以上の者から隣接する土地を賃借し、これを一体として利用している場合には、その全体を1画地とするものと解されている。
本件土地には、借地権者であるJ社の所有する給油所及び遊技場の2棟が存在し、外形上からも登記簿上からもガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場の事業の用に供されていることが認められる。
本件土地は、地続きであり、分割されることなく、その全部を請求人及びGの2名が相続し、その全体がJ社の事業に係る建物の敷地として一体として貸し付けられ、現実に、J社の所有する建物の敷地として、J社の事業の用に供されていることが明らかであることから、貸し付けられている全体が1利用単位、つまり1画地の貸宅地であると判断するのが相当である。

5.貸宅地と貸家建付地が隣接しているとき
下図のA土地は、甲の所有ですが、乙に貸していて、乙はA土地の上に建物を建てて所有しています。
他方、B土地も甲の所有ですが、甲はB土地上に建物を建てて、その建物を丙に貸しています。
この場合、A土地もB土地も甲の相続財産ですが、A土地には借地権が、B土地には借家権という他人の権利が存し、また、権利を有する者(借地権者、借家権者)が異なることから、利用の単位はそれぞれ異なると認められるため、それぞれを一つの土地として、A土地は貸宅地の評価を行い、B土地は貸家建付地の評価を行います。


(国税庁ホームページ:質疑応答事例 宅地の評価単位-貸宅地と貸家建付地 一部変更)