ここでは、相続人が単独で取得した土地とその土地に隣接する土地で、同じ相続人が共有により取得した土地の評価単位が争われた事例をご紹介しています。
評価単位の基本的な知識については、下記「土地の評価-路線価による計算方法」の頁の「3 土地の評価単位の基本」に書いていますので、併せてご覧ください。

土地の評価ー路線価による計算方法




相続税のお仕事をしていると、親子や、兄弟姉妹などで共有している不動産に遭遇することも少なくないです。
また、両親が遺した土地を相続人が相続するとき、共有にすることもよくあります。
土地が1つの場合は、2人の相続人が共有で取得しても、その土地は1つの土地として評価しますので、評価単位の問題にはなりません。
しかし、土地が複数ある場合で、遺産分割協議により、土地を単独で取得した相続人が、その土地に隣接する土地を共有で取得した場合、その2つの土地は、どのような評価単位とするべきでしょうか?
平成22年7月22日裁決では、共有地について「単独所有地は、所有者が何ら制約なく利用できる土地であるのに対し、共有地は、その処分等に共有者の同意が必要であるなど、単独所有の場合と比較して使用、収益及び処分等について制約があるから、評価対象地が共有か否か及び共有の場合の持分割合は、評価単位の判定に当たって考慮すべき事情であるといえる。」と述べられています。
判決や裁決には、遺産分割協議により、単独で取得した土地と共有で取得した土地が隣接する場合、それぞれ別個の評価単位とするものと一つの評価単位として一体で評価するものとがありますので、ご紹介します。
【目 次】
1.遺産分割による単独取得土地と共有取得土地をそれぞれ別個の評価単位として評価するべきであるとされた事例
2.相続人が取得した単独所有地及び共有地の全体を1つの評価単位として、一体として評価するのが相当であるとされた事例
3.コメント

1.遺産分割による単独取得土地と共有取得土地をそれぞれ別個の評価単位として評価するべきであるとされた事例
平成21年8月26日裁決(非公開裁決) TAINSコード:F0-3-300
(1)基礎事実及び認定事実
本件相続開始日(平成18年■■月■■日)現在において、本件土地(A土地とB土地を合わせた土地で、遺産分割協議によりA土地とB土地に分割された)は、被相続人及び請求人■■が居住の用に供していた本件建物の敷地、本件建物への通路及び庭として利用されていた。
A土地は、北側道路に等高に接面する、間口24.78m、奥行き27.53mのほぼ正方形の土地である。
B土地は、南側道路に等高に接面する、間口25.55m、奥行き14mの長方形の土地である。
請求人乙は、平成18年11月3日、本件土地のうち、A土地について、売主を相続人代表■■■■■、買主を■■■■■■、売買代金を1億2860万6600円とする売買契約を締結した。
請求人らの間で、平成19年2月19日、本件相続に係る遺産分割協議が成立し、A土地は、請求人乙が1,000分の167、請求人甲が1,000分の833の持分により共有で取得し、本件B土地は、請求人甲が単独で取得した。また、請求人甲は、本件土地の一部及び他の遺産を取得した代償として、請求人乙に対して金5900万円を支払うこととなった。
A土地の売買代金は実測精算の結果1億2822万2200円となったが、請求人乙は、当該売買代金の内、本件A土地の持分1,000分の167に相当する2141万3107円を平成19年4月3日に受領した。
(略図)

(2)請求人の主張
本件A土地に請求人乙の名義を入れたのは、請求人乙が代償金の受領を確実なものとするために、法定相続分の6分の1の名義を通すことを要望し、請求人甲はこれに応じることとなったものであり、実質的には本件土地全体を請求人甲が取得したものであること、更に、「雑種地を評価するに当たっては、相続開始時において物理的に一体として利用されている土地ごとに区分して評価するのが、『相続開始時における財産の現況』に即した評価と解される。」旨判断した平成7年1月12日付の裁決事例は今回の審査請求に置き換えられる内容であることから、全体を1画地の宅地として広大地の評価を適用することが相当である。

(3)国税不服審判所の判断
本件土地は、本件相続開始日においては、建物の敷地、建物への通路及び庭として、一体として使用されていたが、その後、本件遺産分割により、A土地は請求人乙が持分1000分の167を、請求人甲が持分1000分の833を取得し、B土地は請求人甲が単独取得したのであるから、B土地は、請求人甲にとって単独所有の自用地として何ら制約なく利用できる土地であるのに対し、A土地は、請求人甲と請求人乙の共有財産であり、共有物の変更や処分は共有者の同意が必要であるなど単独所有の場合と比較して使用、収益及び処分について制約がある土地であると認められる。
そして、本件遺産分割が著しく不合理な分割であるとは認められない。
以上によれば、本件土地を1画地の宅地として評価する事情は認められず、本件遺産分割後のA土地及びB土地をそれぞれ1画地の宅地として評価することが相当と認められる。

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2.相続人が取得した単独所有地及び共有地の全体を一つの評価単位として、一体として評価するのが相当であるとされた事例
平成24年12月13日裁決(公表裁決) TAINSコード:J89-4-15
(1)認定事実
本件C土地(C1土地ないしC5土地)は、4筆の宅地、1筆の畑及び8筆の雑種地から成る土地であり、本件相続開始日前には、本件C1土地の4筆及び本件C5土地(1筆)が単独所有地であり、これらを除く8筆が共有地であった。
その後、遺産分割により、本件C土地に係る被相続人の所有権又は共有持分権の全てを請求人Jが取得したため、本件C1土地の9筆及びC5土地(1筆)が請求人Jの単独所有地となり、これらを除く3筆が、それぞれ請求人J、その子R、本件配偶者、本件会社のいずれかによる共有地となった。
本件C土地は、請求人Jら所有のC6土地とともに、被相続人が代表取締役を務めていた会社に対して賃貸され、本件会社は、本件C土地、C6土地及び本件会社所有のC7土地を併せた土地上に、鉄骨製の二層の立体駐車場の設備(構築物)を設置し、これを月極駐車場として賃貸の用に供し、本件C土地及びC6土地の所有者(共有者を含む。)に対し、賃料として各土地の固定資産税の1.5倍に相当する金額を支払っている。本件C土地及びC6土地の上に存する賃借権(本件C賃借権)は、登記はされておらず、その残存期間が5年を超えるものとは認められない。

(2)請求人の主張
本件C土地は、その全てが本件会社の立体駐車場の敷地として貸し付けられていること、また、本件C土地の全ての筆に本件被相続人の持分があり、その各持分を一人の相続人(請求人J)が取得していることからすれば、本件C土地全体を一団の雑種地として評価すべきである。
なお、本件相続開始日において、本件C土地の一部が共有地であったのは、本件被相続人が生前、相続税対策として、子や孫への土地の贈与を行ったことにはじまり、その後、共有のデメリットを考慮し、交換により共有状態の解消を図ったものの、完全に共有状態を解消する前に本件相続が発生したという事情による。
(3)審判所の判断
本件C土地は、その全てが立体駐車場として賃貸の用に供されている雑種地(現況の地目)であり、その周囲の状況からして、当該雑種地は、宅地と状況が類似する雑種地に該当する土地である。そして、その所有関係は、本件相続に係る遺産分割後においても、単独所有地と共有地が混在している。
本件相続に係る遺産分割の前後における本件C土地の利用状況をみると、本件C土地は、本件会社に対して一括して賃貸されており、本件会社は、本件各土地上に堅固な構築物(立体駐車場)を設置し、これらの土地を立体駐車場の敷地として一括して利用している。そして、本件会社は、本件相続開始日以後の株主及び代表取締役が本件配偶者であり、その他の役員も請求人Jら被相続人の親族のみで構成されている。また、本件相続に係る遺産分割後の本件C土地の共有関係をみると、共有者は、本件配偶者、請求人J、その子R及び本件会社(株主は本件配偶者のみ)であり、1名を除き、本件会社の関係者と共通である。
以上の利用状況、権利関係等諸般の事情を考慮すれば、本件相続開始日において、本件C土地は、その一部が共有地であっても、現に一体として賃貸の用に供され、本件相続に係る遺産分割後も同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる状況にあったから、本件C土地については、その一部が共有地であることによる使用等の制約が実質的にないものと認められる。したがって、本件C土地は、全体を一つの評価単位として、一体として評価するのが相当である。

3.コメント
2の平成24年12月13日裁決は、雑種地の事例ですが、単独取得土地と隣接する共有地の評価単位の判断を行う場合、「その一部が共有地であることによる使用等の制約が実質的にないものと認められる」か否かを基準とする考え方は、宅地について判断する上でも参考になると思います。